佐久市: こころのミュージカル
–心の中の光となって –人間物語 丸岡秀子の半生–
稽古会場でのインタビュー:監督:奥村達夫さん
1幕(1部)心の中の光となって人間物語 丸岡秀子の半生(1部)
こころのミュージカルー心の中の光となってー人間物語 丸岡秀子の半生
2幕(2部)心の中の光となって人間物語 丸岡秀子の半生(2部)
かつて日本全国の農村を歩き、厳しい労働環境下にあった女たちの地位向上のために生涯を捧げた一人の女性がいた。信州が生んだ女性解放運動の先駆者・丸岡秀子。明治36年、臼田町の造り酒屋に生を受けた秀子は、生後間もなく母親を亡くし、実家の小作人の祖父母のもとへと預けられる。そこで彼女は小作農の厳しい現状を目の当たりにし、とりわけ農家のなかでも厳しい境遇に置かれた弱い立場の女性達に強い思いを寄せていく。戦前から戦後にかけ、農村の女性の地位向上のために邁進する彼女を突き動かしたのは、臼田での少女時代の原経験ゆえであろう。
いま丸岡秀子の郷里、佐久市では彼女の生涯を描いたミュージカル演劇が上演されている。こころのミュージカル「心の中の光となってー人間物語 丸岡秀子の半生ー」は市民参加型のミュージカル。舞台は二部構成となっており、第1部は臼田での少女時代に焦点が当てられる。両親の愛情を知らずに育った秀子は、祖母が母親代わりとなった。さらに一人の同年代の少女との出会いが彼女に大きな影響を与えていく。第1部のクライマックスシーン、養蚕の農作業で女性たちが集団で歌う場面は圧巻だ。秀子の祖母や幼馴染たちの舞い踊る姿からは、苦しい労働のなかを必死に生き抜いた女性たちの魂の躍動が伝わってくるようだ。
公演終了後のインタビュー:監督さんと出演者さん
第2部では、誰の力も頼らずに生きていける女性になりたいと願う秀子が、職業婦人として独立を果たしていく。教員生活を経て、産業組合中央会(後の農協)で、農村の女性達の生活調査に従事する様子が歌とダンスで描かれる。彼女を支えたのは「運命は変えられない。大切なのは運命に負けないこと」という信念であった。当時の女性の置かれた過酷な状況を諦めることなく、社会を変革し続ける秀子。フィナーレの「日本母親大会」での演説で、万雷の拍手のなか舞台は幕を閉じる。
劇中では少女から50代まで各年代の秀子を4人のキャストが演じている。音楽も素晴らしく、「夏は来ぬ」や「遠き山に日は落ちて」など懐かしの唱歌が効果的に舞台を彩る。臼田の方言による台詞も楽しい。バラエティに富んだ楽曲やダンスパフォーマンスもあり、2時間以上の上演時間も全く苦にならなかった。運命に抗った一人の女性の生涯に触れる経験を存分に満喫していただきたい。